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2021.10.13
コラム

 自転車に乗って、病気の予防を!          

コラム監修:自転車総合研究所 所長 古倉 宗治

気づけば今年も10月になり、下半期も後半にさしかかりました。

この時期になると汗ばむ日も少なくなるので、出勤時に自転車で駅に向かう時間がとても楽で好きな時間になります。空気も澄んでいて夕方以降は空がきれいに見えるので帰宅時もまた好きな時間です。そういえば今年の十五夜は雲が多い夜空でしたがみなさんは中秋の名月は見れましたか?今年は満月でしたが、中秋の名月の日(旧暦8月15日に相当する日)と満月の日が重なるのは8年ぶりだそうです。そういった「何年に1度」的なイベントは見たくなってしまう性格なので、時々雲の隙間から現れる満月を見ながら月見団子をほおばりつつ、今回のコラムの内容をどうお伝えしようか考えていました。

コラムの第2回目で自転車のメリットについてお話ししましたが、その時書ききれなかったことの1つに「病気の予防」があります。歳を取るにつれて常に健康でいることは難しいことかもしれませんが、毎日自転車に乗ることでいろいろな病気の予防にもつながります。

先日読んだ森村誠一さんの著書「老いる意味」※1の一節に、自転車と認知症予防の関係が書かれていました。森村さんは脳の専門家から聞いた自転車に乗ることで得られる効果を次のように語られています。

《 視覚、聴覚、反射神経。それに加えてバランスを取るためにも脳は働く。

          それぞれの機能を同時に働かせるため、脳が活性化するのである。》

※1 森村誠一「老いる意味 うつ、勇気、夢」,中公新書ラクレ,2021年2月10日,P156-157

そういえば…と思い出したのは私の母のことなのですが、母はほぼ毎日自転車に乗っていますが(腰が悪いので徒歩よりも自転車の方が楽みたいです。)、腰痛以外はいたって健康でまだ認知症の心配もありません。もしかしたら自転車に乗ってるおかげかも?と森村さんの著書を読んで思いました。

しかも嬉しいことに、自転車に乗ることで予防できるのは、認知症だけではありません。生活習慣病(メタボや高血圧、糖尿病、がん等)やロコモ※2のリスクまでも予防することができるのです。

※2 運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態を 「ロコモティブシンドローム」=ロコモといいます。ロコモが進行すると、将来介護が必要になるリスクが高くなります。(「日本整形外科学会 ロコモティブシンドローム予防啓発」公式サイトによる)

厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」では、将来、生活習慣病やロコモ及び認知症を発症するリスクを低減させるための基準を、表1の通り定めています。この表を見ると、

18-64歳の場合は23メッツ・時※3/週、65 歳以上の場合だと10 メッツ・時/週の身体活動(生活活動・運動)を行うことが望ましいとしています。

メッツ・時と言われてもいまいちピンとこない方がほとんどかもしれませんが、例えば65歳以上の10メッツ・時/週の場合、横になったままや座ったままにならなければどんな動きでもよいので、表2にあるような身体活動を毎日40 分程度行うことに値するそうです。

※3 「メッツ」とは運動強度の単位で、安静時を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したものです。(厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」より)「メッツ・時」は【運動強度「メッツ」×実施時間(時)】で表すことができます。

表1 個人にとって達成することが望ましい身体活動・運動体力の基準

表2 身体活動のメッツ表

では、自転車の場合、どれくらい乗れば表1の基準値になるのでしょうか?

18-64歳の場合、通常の速度の自転車で1日50分弱、65歳以上の場合は、遅い速度の自転車で1日25分弱、電動アシスト自転車なら1日30分弱走ることで達成することができます(表3)。

表3 自転車の場合の必要な運動量

普段から自転車を利用することが多い方や、通勤・通学で自転車を使用している方には問題ないかもしれません。しかし、そんなに自転車に乗れないよ!という場合でもご安心ください。自転車だけではなく、散歩やスーパーへの買いもの等、日常生活の活動を組み合わせることにより23メッツや10メッツにしていけばよいのです。(表2は簡単なメッツ表になりますので、詳細を知りたい場合は、厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」をご覧ください。)

WHOは「身体的活動不足」を全世界の死亡に対する危険因子の第4位と報告しています。

若い世代は、実は高齢世代に比べて運動習慣のある人が少ないという結果※4があるのです(男性で20-64歳23.5%、65歳以上41.9%)。なので自転車や他の生活活動・運動を組み合わせて常日頃から身体的活動不足にならないように気をつけていただきたいと思います。

※4 厚生労働省「国民健康・栄養調査」による。1回30分以上の運動を週2回以上実施し、これを1年以上継続している人の集計値。

高齢世代は、若い頃は普段から身体を動かしていたとしても加齢とともにそういった機会が減ってしまう方も多くいらっしゃると思います。運動不足だからといって突然運動をすると足腰を悪くする可能性もあるので注意が必要ですが、自転車は膝に負担が少なく、座りながら一定の運動量を確保でき、また、買い物や通勤、用足しの途中に気軽にできる点でお勧めしたい適度な強度の運動です。それに高齢者の方の自転車乗車中の人口10万人当たりの事故は65歳未満のそれより比較的少ない傾向にありますので、安全運転を心がけて乗っていただければ生活習慣病やロコモ・認知症の予防につながると思います。

左:若い頃のデンマーク女王マルグレーテ2世 右:子供を自転車に乗せて走るデンマーク皇太子
(コペンハーゲン市資料(2017年訪問時)より)

ヨーロッパでは早い時期から自転車が普及していて、例えばデンマークでは女王や皇太子も日常的に自転車を使っています。そのため、自転車は“病気の予防に効果がある健康に良い乗り物”という意識も早くから根付いています。実際にドイツでは「トラック一杯の薬より、一台の自転車」ということわざまであり、自転車の健康効果を的確に表現しているんです。

この心地よい季節にぜひ自転車生活をはじめてみてください。

病気を予防して健康的な生活を送りましょう^^

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