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2021.12.21
コラム

オランダに学ぶ:自転車で広がる公平な社会      

コラム監修:自転車総合研究所 所長 古倉 宗治

家族や友人と話していると、「1年ってあっというまだね」といった枕詞がつく季節になりました。近頃は寒さに耐えながら自転車に乗っていますが、この時期はちょっとした楽しみもあります。それは街中に設置されたクリスマスのイルミネーションです。もちろん見惚れて衝突事故には要注意ですが、この時期ならではの街の景色の中を自転車で走っていると、寒さで険しくなっている顔もほころんでいく気がします。

さて、クリスマスといえばサンタクロースですが、その起源がオランダにあることは知っていましたか?4世紀にミラ(現在のトルコの位置)に実在した聖ニコラオスという司教がサンタクロースのモデルと言われています。貧しい人たちや子供を助けていた聖ニコラオスの話が伝説としてオランダで語り継がれ、その後17世紀にオランダ人が新大陸(アメリカ)に入植した際にこの伝説が新大陸に広がっていき、そこから世界中に広まっていったということなのです。聖ニコラオスはオランダ語で「シンタ・クラース」ですが、それがアメリカで広まる際に「サンタ・クロース」となったようです。オランダではシンタクラースを祝う日が12月5日とされていて、国を挙げたイベントになっています。なんとも楽しそうです!

出典 SINT IN AMSTERDAM. https://www.sintinamsterdam.nl/pers/[2021年12月14日閲覧]

シンタクラースのお祝いについても書きたいのですが、ここまでにして本題に入ろうかと思います。

前回のコラムではオランダ自転車ビジョンで提唱されている利益のうち「幸福」を取り上げ、自転車の幅広い役割をお伝え出来たかと思います。今回はその利益の中から「社会的公平」をご紹介します。

社会的公平も前回の幸福と同様、3つのポイントに分けて解説しています。

図1 Cycling encourages social participation

 

「Cycling allows people to get access to more opportunities」

1つ目は“交通貧困”に焦点を当てたもので、自転車に乗ることによってより多くの機会にアクセスできるようになる、と書かれています。

交通貧困というのは金銭的な問題だけではなく、適切でアクセス可能な交通手段がない状態も含まれています。交通手段の欠如が原因で、病院に行ったり、仕事を見つけたりすることが難しくなったり、あるいは、学校に行くことが困難になってしまします。

しかし自転車は他の交通手段と比較しても手ごろな値段で実用的でいて、機動性もあるため、自転車を使うことで仕事や学校、活動のための幅広い選択肢にアクセスが可能になるというわけです。

 

「Cycling keeps the elderly socially connected」

2つ目は、高齢者がより長く社会活動を続けることを可能にする点です。

実際に高齢者の徒歩移動には限界があるため、自転車に乗って外出することで行動範囲を広げることができます。それにより新たなつながりが生まれ社会的な居場所を広げることができると言われています。オランダでは一般的に自転車は8歳~80歳までは安全と言われているため※1、多くの高齢者が自転車に乗っていて広範囲の移動を可能にしています。

自転車に乗る高齢者※1

※1 BICYCLE DUTCH. Beautiful people passing by on their bicycles(14 AUGUST 2014)           

https://bicycledutch.wordpress.com/2014/08/14/beautiful-people-passing-by-on-their-bikes/

[2021年12月9日閲覧]より写真とキャプション引用                            

 

「Cycling increases social interaction」

最後は、社会的交流を増加させるということです。自転車に乗っていると交通の流れを調整したり、衝突を防ぐために他の道路ユーザーとの社会的な交流が必要になります。その結果、社会活動として経験されます。《ヒトとヒトが出会う機会を多く与えてくれる。目が合い、ソーシャル的な機能を持つことができる》※2といった考えをオランダの人は常日頃から持っているのです。

道路ではなく駐輪場の話ですが、帰りの時間帯は混んでいるので他の利用者とアイコンタクトを取りながら「お先にどうぞ」といったジェスチャーを時々するのですが、まさにそれも社会的な交流ということになるのだと気づかされました。知らず知らずのうちにしていましたが、こうした自然なコミュニケーションが、譲られる側はもちろん、譲る側も優しい気持ちにしてくれると感じています。

※2 オランダ ユトレヒト市資料(2017年訪問時)より

以上のように、自転車は人々の社会参加を促します。特に高齢者には貴重な移動手段ですが、これを支えるのは行った先での駐輪する場所なのではないでしょうか。(詳しくは最後のミニコラムをご参照ください)。

オランダと日本との交流は江戸時代に遡ります。鎖国をしていた時期もアジア以外ではオランダのみ出島からの貿易を許可していたため、かれこれ交流は400年間も続いています。その間、蘭学、医学、治水技術などオランダから多くのことを学んできましたが、これからは自転車のことも学んでいきたいですね。

来年もみなさまのお役に立てるコラムを目指してがんばっていきますのでどうぞ宜しくお願いいたします。

良い年をお迎えください^^

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